操
岡村靖幸、４年ぶり８枚目のフル・アルバム。全９曲入り。相変わらず収録曲は１０曲以下でしかないけれど、最近は他のミュージシャンもそんな感じだから、物足りなさは特に感じない。
ここ数年は、デビュー当初から名作『家庭教師』までの第１次黄金期以来の安定した活動ペースになっていて、下の世代のミュージシャンと積極的にコラボレートをしながら、定期的に新曲のリリースが続いている。徐々にお茶の間への露出も増え、万人に受け入れられる土壌が完全に整った中での新作となる。
雰囲気としては、前作『幸福』と大きな変化はないが、何より嬉しいのはここで初お披露目となる楽曲が５曲入っていること。そしてそれらが、いかにもアルバム収録曲然とした地味な曲調ではなく、一つ一つがそれぞれにポップなメロディラインをもっていて、前作では留保事項としていた「完全復活」の言葉をいよいよ捧げたくなる出来。
新曲の傾向としては８０年代ポップスを現代にアップグレードしたような曲……が多く、岡村のファンクナンバーが好きな人には物足りなく感じるかもしれない。が、そんな人には９０年代プリンス的なアレンジが施された１曲目がおススメ。この曲にはギターとして小山田圭吾が参加していて、好き者にとっては垂涎のコラボレート曲でもある。
アルバムの構成として、前半にダンスナンバーをノンストップで固め、後半はミディアムテンポの曲をじっくり聴かせるという形をとっているのだけれど、そんな流れの中で先行シングル“ステップアップＬＯＶＥ”がちゃっかり別ヴァージョンに変化を遂げているのもうれしい。
初期のような狂気は影を潜めたものの、至れり尽くせりのアルバムという点では、もう最高傑作の称号を与えてもいいかもしれない。
（９点：★★★★★★★★★☆）
宮本、独歩。
エレファントカシマシのフロントマン宮本浩次が、バンド３０周年記念ツアーを終えてからスタートさせたソロプロジェクト。その第１次集大成的な1stソロアルバム。
既にエキセントリックなキャラクターが独り歩きし、お茶の間にも定着した後のソロ活動であったため、華やかなバンド活動から離れた趣味的な作品、というわけにはいかず。ここ最近のポップ化著しいエレカシ以上にポップで歌謡曲志向全開なアルバムとなった。
腕の立つスタジオミュージシャンを集めたセルフプロデュース曲や、『ライフ』以来の小林武史プロデュース曲、横山健とのコラボレート曲、さらには椎名林檎や東京スカパラダイスオーケストラにフィーチャーされた曲らが余すところなく収録されていて、内容は玉石混交、非常にとっ散らかっている。
しかし、多様な曲調を全て自分のものにして歌いこなす宮本のヴォーカリストとしての才が、アルバムに一本の軸を与えている。宮本の音楽家しての側面より、歌手らしさが際立ったソロアルバムであり、これはこれで正しいソロ活動の形かもしれない。
アルバムは３種類の形態でリリースされている。このような商魂溢れる売り方も、ポップスなのだから……と諦めざるを得ない。自分は弾き語りライブＤＶＤ付きを選んだ。ソロ活動を進めるにあたって、もう一つの選択肢としてあったであろう、個人的嗜好を突き詰めた音楽世界が垣間見えるものとなっている。
（８点：★★★★★★★★☆☆）
バタフライ・アフェクツ
- アーティスト: ソウル・フラワー・ユニオン
- 出版社/メーカー: SPACE SHOWER MUSIC
- 発売日: 2018/12/19
- メディア: CD
- この商品を含むブログ (3件) を見る
つまり、ＳＦＵはまず第一にロックバンドであるということ。フォークソング的な中川ソロには無い、軽快なリズムとエレキギターのリフ、えぐみのあるシンセの音色が、これでもかという具合にフィーチャーされている。ジャケからして久々のメンバー総出演。バンドとしての姿を大いにアピールしている。敢えて十八番である三線、囃子などの民謡的要素を封印したのも、原点としてのバンドサウンドに焦点を絞ろうと思ったからに違いない。
そう、本作は多くの評論家やリスナーから「ロック回帰」作と言われているが、それは正しくない。あくまで焦点が絞られたということなのだ。ニューエスト・モデル的な作風の曲は、これまでのＳＦＵにも散見はされていた。しかし、アルバムを貫くほどではなかったということ。
これは、本作が全１０曲４４分とＬＰサイズの長さであることから、一昨年あたりから作られているセレクションＬＰ『DANCE HITS』シリーズからフィードバックされたものではないかと推測している。踊りながらサクッと通して聴けるこの手軽さは、「傑作」と諸手を挙げるほどのスケール感には乏しいかもしれないが、今までのＳＦＵには無かったもので新鮮な味わいがある。
（８点：★★★★★★★★☆☆）
